小説サンプル(親カテゴリ)>風立ちぬ

概要

2009.02.24.   →あらすじ
1936年(昭和11年)、雑誌「改造」12月号に、先ず「風立ちぬ」(のち「序曲」「風立ちぬ」の2章)を掲載。翌年1937年(昭和12年)、雑誌「文藝春秋」1月号に「冬」の章、雑誌「新女苑」3月号に「婚約」(のち「春」の章)を掲載。翌年1938年(昭和13年)、雑誌「新潮」3月号に終章の「死のかげの谷」を掲載ののち、同年4月、以上を纏めた単行本『風立ちぬ』が野田書房より刊行された。現行版は新潮、岩波文庫などから重版され続けている。

美しい自然に囲まれた高原の風景の中で、重い病(結核)に冒されている婚約者に付き添う「私」が彼女の死の影におびえながらも、2人で残された時間を支え合いながら共に生きる物語。時間を超越した生の意味と幸福感が確立してゆく過程が描かれ、風のように去ってゆく時の流れの裡に人間の実体を捉え、生きることよりは死ぬことの意味を問うと同時に、死を越えて生きることの意味をも問うた作品である。

作中にある「風立ちぬ、いざ生きめやも」という有名な詩句は、ポール・ヴァレリーの詩『海辺の墓地』の一節“Le vent se lève, il faut tenter de vivre”を、堀辰雄が訳したものである。

「風立ちぬ」の「ぬ」は過去・完了の助動詞で、「風が立った」の意である。「いざ生きめやも」の「め・やも」は、未来推量・意志の助動詞の「む」の已然形「め」と、反語の「やも」を繋げた「生きようか、いやそんなことはない」の意であるが、「いざ」は、「さあ」という意の強い語感で「め」に係り、「生きようじゃないか」という意が同時に含まれている。ヴァレリーの詩の直訳である「生きることを試みなければならない」という意志的なものと、その後に襲ってくる不安な状況を予覚したものが一体となっている。また、過去から吹いてきた風が今ここに到達し起きたという時間的・空間的広がりを表し、生きようとする覚悟と不安がうまれた瞬間をとらえている。

作中の「私」の婚約者・節子のモデルは、堀辰雄と1934年(昭和9年)9月に婚約。1935年(昭和10年)12月に死去した矢野綾子である。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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